今月の相場考察
日本市場
日経平均株価
出典:SBI証券
株価はここ3ヶ月の底から反発してきましたが、実質的な相場環境は良いとは思えません。
景気動向指数や実質GDP推移から見ても、政治的要因をポジティブに織り込んだ株価の動きであり、これまでも、これからもトランプ大統領の発言一つで過敏な反応がある相場のように思えます。
日本の株価指数に投資されている方は、発言毎にヒヤヒヤした場面が続きそうですね。
株価は反発したけれど景気は…
景気動向指数
出典:Bloomberg
先月に発表された、景気動向指数の基調判断は6年2か月ぶりに「悪化」です。

この報道時、数字は悪くなっているのにも関わらず株価は上がりました。
景気が悪くなってきたという判断から、消費税増税が延期になるだろうと市場は判断したからです。
しかし、実際はどうなのかわからないまま。このまま景気が回復に向かえば、結局のところ増税する訳ですから同じことなのでは。
とにかく良い材料はないのかと必死に探した結果だとすれば、今の株価は果たして正しいのでしょうか。
2019年第1四半期(1〜3月)のGDPは輸入・在庫除くとマイナス成長

本日発表された、2019年1─3月期の国内総生産(GDP)2次速報値は、前回から上方修正されて2.2%増となりました。
法人企業統計を反映して、1次速報ではマイナスだった設備投資がプラス転換しましたが、民間在庫や公共投資、住宅投資が下方修正されました。内需の寄与度はプラス0.1、外需はプラス0.4と1次速報と変わりません。輸入減少に伴う外需要因も前回と変わらないとのこと。ホントにそうなのか。
実質GDP推移
出典:VESTA
しかし、上の図を見るとわかりますが、今回発表された実質GDPの速報値に比べて、輸入在庫を除けばマイナスです。これは輸入マジックです。
GDPがプラスになっているのは、輸入が前期に比べて減ったために、総合的に足し算と引き算をしたらプラスだったというマジックの結果です。
結果的に、日本の経済を占う家計消費と企業設備投資はマイナスだということは理解しておいた方が良さそうです。政府の発表された数字と、それが作り出す雰囲気は正しいのでしょうか。
なんとしてでも増税に向けた数字作りなのかなと思ってしまいます。
米国市場
NYダウ
出典:SBI証券
強いぞNYダウ…?
なんだかんだでグイグイ戻ってきました。強い。
ですが波乱要因は消えていません。米中の貿易戦争に伴い、貿易に関する制限が増加しているのは懸念材料です。
単純に考えると、貿易戦争なんて実態経済に悪い影響しか無い訳ですから、このまま行けば急減速なんて事態にも。トランプ大統領は、この辺を巧みに操りたいがための発言が多すぎる気もします。
そのため、株価は発言一つでレスポンス良く反応するので、アクセルオンの発言に対して一気に吹け上がるエンジンに仕上がってきましたね。
雇用統計は悪かったけれど

アメリカ労働省が発表した5月の雇用統計は、非農業部門雇用者数の伸びが大幅に鈍化、さらに賃金上昇率も予想を下回りました。これにより、FRB(米連邦準備理事会)による年内に利下げするかもという観測の元、株価は好反発しました。
金利が据え置かれた今、ストーリーは2択です。
本当に金利が下がれば、市場は歓迎ムードですが、その待つ先は利上げ。
もし、インフレが急激に進み、次回のFOMCまでに統計等が好感触だと据え置き、または利上げ。
とにかくいずれにせよ、最終的にどこかで利上げをしないことにはその先に進めません。
実際に利上げとなるときには、市場はかなり下げそうですね。
逆イールドに今後も注視
3カ月物・10年物国債利回り差
出典:みずほ総研
逆イールド発生後に景気後退入りしているという話は有名です。
コレは景気後退の予兆とされており、長短金利差の年限の組み合わせは様々ありますが、3ヶ月物と10年物の組み合わせは景気後退の予測精度が高いとされています。特に1年後の景気後退予兆としては3ヶ月物と10年物の金利差が最も信頼できると、様々なところで用いられています。
1990年以降、3ヶ月物と10年物の間で逆イールドは今回を除き3回発生しています。
1998・2000・2006年に発生しており、短期間のうちに逆イールドが解消された1998年は景気後退入りを回避しました。
一方で、逆イールドが長期に亘った2000年と2006年は景気後退入りをしました。
今回の逆イールドは一旦解消されましたが、FRBが挙げる「不確実性」は完全には解消していません。再び発生するときには、楽観視できるような状況でないはずです。
まさかの事態に巻き込まれぬよう、幸運を祈ります。
欧州市場
イギリスFTSETM100指数
ドイツDAX30指数
出典:SBI証券
相変わらず景気は減速傾向
貿易摩擦、それに加えて世界経済の景気減速懸念、これらの要因によりヨーロッパの主要株式は下落基調です。
国外の環境の不安定化も、ヨーロッパ経済の景気減速の要因です。
さらに、ブレグジットを巡る英国政権の混乱と、イタリアの財政不安等の不透明感の高まっています。金融市場では安全資産への資金流入も加速。ドイツの10年国債利回りは過去最低水準まで低下してきました。
ドイツ10年国債利回り推移出典:Bloomberg
EUの実質GDP成長率も冴えないので、ここから景気が持ち直すなんてことはなさそうです。
下振れするリスクの方が多いために、なかなかポジティブな材料が見つかりません。
欧州連合 実質GDP成長率
出典:CEIC
ブレグジットが大きく日々取り上げられていますが、その他にも表に出てきていない政治的要因、国策的要因は多いと思われます。EU関連への逆張りはどうなりますかね。
新興国市場
先進国株式と新興国株式の推移
出典:VESTA
続・貿易戦争物語

新たなステージに突入した米中貿易戦争。
中国、そして中国企業との関わりが深まっている中、グローバルにビジネス展開する企業は試練にさらされます。
対象は中国だけでなく、仲良くビジネスしている人もダメということ。
トランプ大統領による追加関税引き上げ発言をきっかけに、アジアの株式市場は大幅下落。アメリカによる第4弾追加関税や、ファーウェイとの取引制限。さらには、メキシコからの輸入品への追加関税も示唆しています。
もう無茶苦茶です。
ファーウェイ社と取引が大きい企業
出典:VESTA
中国はアメリカへの態度を依然強く保ったまま。コメントでは「国家の尊厳」についても言及しており、今回のアメリカとのやりとりに腹を括った様子。交渉は長期化する可能性が高く、世界経済は確実に巻き込まれます。
第二次モディ政権、発進
インドSENSEX
出典:SBI証券

現モディ政権が下院過半数超を獲得して、引き続きインドを引っ張っていきます。
選挙結果は予想を裏切らず、市場は反発。
第2次モディ政権の、58人の閣僚名簿を発表されました。このうち23人が新任となっており、構造改革が強く期待されています。
貿易戦争の影響をあまり受けない立場にいるインド。このまま外の嵐が収まることを願うばかりです。
最後まで読んでいただき ありがとうございました♫

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データ引用
・ VESTA-無料で使える投資ツール-
・ SBI証券